クライバーと佐渡裕

 カルロス・クライバーの未発表ライブが輸入CD店ではバカ売れしているらしい。そして巷ではクライバーならではの「爆演」ぶりが話題となっている。私も遅ればせながらCDを入手して聴いてみたが、思ったほど破天荒な印象は受けなかった。もちろん演奏自体は推進力と重量感にあふれる素晴らしいものなのだが、同じベートーヴェン交響曲第7番」(以下「ベー7」)だったら、来日公演のときの方がスピード感、躍動感に溢れてたかなと思った。個人的にクライバーの「ベー7」といえば来日公演の印象が強いから、なおそう感じるのかもしれないけど。だからといってこのCDが良くない演奏というわけではないので、念のため。
 そんなことをぼんやりと考えてるとき、ウェブラジオで佐渡裕の「ベー7」を聴いた。オケはスイス・ロマンド管だ(→ストリーミングはここ)。正直ここまでやるとは思わなかった。「爆演度」でいえばクライバーに勝るとも劣らない。そして音のバランスや内声部の引き立て方など、音作りも結構しっかりしている。ここまで彼の個性がはっきりと聞いたことは、少なくとも日本のオケとの共演では無かった。これは単にこの歴史あるオケとの相性がいいだけなのか、それとも日本のオケだと首尾よくいかない特別な理由でもあるのか。ともあれエイベックスが佐渡裕をもっと売り出そうと本気で思っているなら、このライブをCD化するべきでは。ついでに言うと「ベー7」の後の同じ作曲家の「三重協奏曲」での、レーピン、マイスキールガンスキーとの豪華共演はもっと良かった。さすがにこれをCD化するのはエイベックスでも無理かもしれないけど。