NHKの音楽番組、そして音楽番組ではないけど音楽を取り上げた番組について

先週から始まった「ぴあのピア」を毎日欠かさず見ている。「結局宮崎あおいが顔出ししたのは第1回だけじゃないか」とか「クリストフォリのフォルテピアノをもっと聞かせてくれぇ」とか画面に向かってツッコミを入れながら見ているが、まあ鮮やかな装飾の施されたチェンバロの数々を毎日眺めるのも悪くない。そんな「ぴあのピア」に今日ピーター・バラカンが出演したのだが、彼が小学校時代にヘンデルの「メサイア」を、何とあのウェストミンスター寺院で歌った経験があることを知り、物凄く驚いて仰け反ってしまった。やっぱりイギリスの教育レベルの高さは日本とケタ外れに高いし、何よりスケールがデカイ!
そのあと見たのが「クローズアップ現代」。以前同番組で横浜FCを取り上げた際、サポーターの一人が怒り狂ってたけど、そのサポーターの心境が解るような気がした。正直いって煮え切らないというか、「残尿感」のようなものが残った。
この番組をご覧になっていない方のために説明すると「いま日本ではクラシックがブームなのに、オーケストラはどこも火の車で、解散の危機に瀕しているところもある」というのがこの番組の大意だった。まあそれについては異論はないのだが、キャスター・国谷裕子の相手を務めるパネラーが悪かった。元閣僚でもあるパネラーが語った「日本のオケはファンサービスに欠けている」「補助金に頼るのではなく、もっと積極的に収入を増やすようなアプローチを」というのは一見正当な意見だ。しかし音楽業界に身をおかない私が見ていても、プロオケの団員たちが賃下げ要求にも従順に応じながら、アウトリーチ(普及活動)を積極的に行ったりするなど、懸命の努力を重ねていることは十分に伝わってくる。これ以上努力するとすれば、もう駅前で缶を前に置いて野外ライヴをするしかないのではないかと思うほどだ。
それから成功例として札幌交響楽団(札響)を紹介してたのは想定の範囲内だが、その理由として「ファンサービスの徹底」だけを挙げていたのはどうか。札響の場合、団員の充実を常に図っているのもあるし、何より世界有数の音響を誇るコンサートホール「Kitara」の存在が大きい。ファンサービスも大事だが、やはり内容が伴わないと客が来ないのだ。
あと番組内でパネラーは「日本では寄付金はアメリカの1/100だ」みたいな事を言っていたけど、「お金が余ってるからメセナでもやってみようか」というお金持ちがうようよしているアメリカと日本とで単純に比較するのは難しい。それ以前に「補助金」が「良いこと」なのか「悪いこと」なのかの考察も必要だ。ヨーロッパでは「クラシック音楽文化遺産だから自治体が積極的に支援しましょう」という基本的な思想があった(と個人的には感じている)。まあ欧州でもアメリカナイズされた考えの政治家が補助金を徐々に削減していこうとしているのは事実だが、寄付金への依存体質が高くなりすぎると、アメリカの歌劇場の新作オペラのような「衆愚主義」的な作品ばかり上演されてしまうのではないかという心配がある。その辺りを如何に折り合いをつけるのかは正直難しいところだ。
要は「このパネラーは、ちゃんと現実を見ているのかな?」と首を傾げる場面が多かったということだ。
(1/19追記)論旨が伝わりにくい箇所があったので、文章を一部修正しました。