ジャングルのモーツァルト

 今英語圏で話題になっているクラシック音楽本がある。本のタイトルは「Mozart in the Jungle」(「ジャングルのモーツァルト」)。題名だけだと村上春樹の新作みたいだが、副題は「Sex, Drugs, And Classical Music」。なんか「セックスと嘘とビデオテープ」みたいですね…エェェェ!?とわざとらしくリアクションをしてしまったが、この本は元プロ・オーボエ奏者のBlair Tindall氏が、クリーンなイメージのクラシック音楽界が実は汚れまくっていることを自らの経験を交えて忌憚無く描いたという、いわゆる「暴露本」だ。

Mozart in the Jungle: Sex, Drugs, and Classical Music

Mozart in the Jungle: Sex, Drugs, and Classical Music

 フリーランスのミュージシャンとして仕事をしていたTindall氏は、一時期オルフェウス室内管弦楽団の録音やツアーに参加していたが、彼女はその仕事を得るために同団のオーボエ奏者とベッドを共にし、更には自らの仕事をより確実なものにするために「他のメンバーとも寝た」と主張している。またミュージカル音楽の巨匠、アンドリュー・ロイド・ウェッバーの作品を演奏するオーケストラツアーの仕事のときは、生まれたままの姿でホテルのプールで某イギリス人指揮者と一緒の時を過ごしたという。そして彼女は「わたしは殆どベッドの中でのギグのために雇われたようなものだわ」とさえ語っている。
 これ以外にも生計をやりくりするため売春婦となり、その結果エイズに感染したチェリストの話など、彼女の周囲に起こった事件をたくさん盛り込んだ内容に、世間は複雑な反応を示している。amazon.comのレビューを見ると、星一つと満点(星五つ)にハッキリと評価が分かれている。すでに「ニューヨーク・タイムズ」紙のレビュー(参照)が出てるが、これはかなり否定的。一方「巨匠神話」(ISBN:4163519009)で有名なノーマン・レブレヒト氏は、自らのコラム(参照)で明らかにTindall氏を支持している。ただこのコラムでレブレヒト氏は、彼女から出版前の草稿を見せて貰ったことを告白しているので、もしかして彼はこの本の出版に深く関わっているのでは、と思わないでもないけど。
 ともあれ俺は内容がすごく気になったので、思わずアマゾンの「order」ボタンをクリックした。読んでみて気が向けばレビューしてみます。