俺といかがわしい業者

先日家でゴロゴロしてたらチャイムが鳴った。我が家はマンションなのだが、入口のインターホンで確認しないとマンション内に通じるドアが開かないのにな、おかしいなと思いつつも玄関に出たら
「こんにちは。松下電器の関連会社のユー・アンド・アイといいますが。あのーここのマンションの浴室がそろそろ耐用年数になる頃ですので、今どんな具合か確認のため見せて欲しいんですが」
と作業服姿の若者が、何やらユニットバスのカタログやら図面やらを片手に早口でまくしたてた。何か胡散臭いと思ったので素直に家に入れずに質問することにした。以下その問答

俺:耐用年数ってどこの耐用年数が過ぎているの?
若者:浴室ですが。
俺:(浴室のどの部分がヤバイのか聞いてるのにな。まあいいか)耐用年数を過ぎているんなら、このマンション全部回ってるの?
若者:まーこの辺回ってます。
俺:(なんかアバウトだな)でも今のところウチの風呂、使っても問題ないから見てもらわなくていいですよ。

といったところで急に逆上する若者。

若者:そんなことしたらあなた困りますよ!!絶対壊れるんですから!!
俺:(困ったらその時業者に言えばいいし。それに何で急に怒り出したんだろう。なんかイヤ)えーすんません。オタクどこの業者?
若者:さっき名乗ったじゃないですか!!
俺:じゃあもう一回言って。
若者:なんで言わないといけないんですか!!
俺:さっき松下どうのこうのって…。
若者:松下電器のユー・アンド・アイですってさっき言ったじゃないですか!!
俺:ともかく絶対オタクを家にいれないから。

もう結構です、といっても執拗に点検を迫ってくる若者。このムードを打破するために違う質問をすることにする。

俺:じゃあ、オタク名刺もってる?
若者:持ってますよ!
俺:じゃあ見せて。見せてくれたら(「しょうがないから」とは言わなかったが)入れてもいいよ。
若者:じゃあ待って下さいよ!

財布を取り出す若者。若者には失礼だがあまり財布は良いものではなかった。「牡丹と薔薇」に登場する焼いてステーキにした財布みたいなヤツだった。しばらく財布の中身をまさぐる若者。札口やらカードポケットやらを一通り見た後

若者:すみません…。今持ってないです…。

とややトーンダウンした若者。しかしすぐに勢いを取り戻す。

若者:でも下の車に置いてありますから!今取りに行きますからね!名刺持ってきたら入れて下さいよ!!
俺:はいはい。

やっと若者は立ち去ったけど、このあと俺は重大な過ちを犯していることに気づいた。名刺を渡せば信用して家に入れてくれるかもよ、ていうヒントを教えてしまったのだ。結局あの若者は3日経った今日もまだ俺の前に姿を見せないけど、皆さんもこんな自称業者がやってきて名刺を見せても注意深く行動しましょう。